一寸法師、というと小さい男の子が京都へ行き、大きな鬼を倒した後、鬼が置いて行った打ち出の小槌で長身の青年になったことで、立派なお侍となって、お姫様と結ばれ幸せになった、という昔話ですね。

現在のあらすじでは、一寸法師は自らすすんで「京都へ行ってみたい、お侍になりたい!」と申し出たようになっていますが、元々の原作ではちょっと事情が違ったようです。今回は、この一寸法師について紹介していきましょう。

一寸法師は、元々は鎌倉時代から江戸時代にかけて成立した「御伽草紙」に掲載された物語で、古い歴史のある昔話です。

産まれたときから身長が「一寸」しかなかったことから「一寸法師」と名付けられたのですが、一寸という長さ、現代では使わないのでいまいち分かりづらいですよね。

一寸、という長さを現代のメートル法に直すと、実は、3cmという大きさになります。改めてその小ささにびっくりしますね。人の息で吹き飛んでしまいそうな大きさです。

さて、そんな一寸法師を産んだのは、子供が無かったために「子供をください」と望んで一寸法師を授かった老夫婦です。

その生みの親のおじいさんおばあさんは、産まれてから何年経っても3cmという大きさから成長しなかった一寸法師を見て、「これはもしかして化け物なのではないか」と気味悪がったらしいのです。

そんな空気を肌にひしひしと感じた一寸法師は、「京都へ出る」と、家出をするように京都へ出ました。それが、原作と現代の一寸法師との大きな違いです。

その他、現代のあらすじでは、一寸法師がお姫様を鬼から助けたのは、お宮参りの途中で鬼に出会ったから、となっていますが、原作では鬼の住む薄気味悪い島に流れ着いたために、鬼と戦うことになったとしています。

というのも、一寸法師が京都へ上がってから住まわせてもらった宰相の家のお姫様に、一寸法師が惚れ込み、「この子をお嫁さんにしたい」と思ったのですが、自分の身長ではそれは叶うまいと思った一寸法師はひと芝居打つことにしたのです。

その芝居とは、お姫様が寝ている間に神棚の米をお姫様の口になすり付け、一寸法師は「自分の米をお姫様が食べてしまった」と泣きわめくことことでした。

人様の米を盗み食いするような娘は家には置いておけない、とお姫様と一寸法師はともに家を追い出され、船に乗って海に出たところ、鬼のいる島へ流れ着くことになります。現代のあらすじの方が、とても分かりやすくなっていますね。

また、一寸法師が元々住んでいた地域についてですが、御伽草紙に「住み慣れし難波の浦をたちいでて都へ急ぐ我が心かな」という記述があるようです。このため、彼は、三津寺から難波付近に住んでおり、京都へ出発したのは、道頓堀川を伝って行ったのではないかと、されています。

最後に鬼が置いて行った打ち出の小槌で、長身の青年になった、と言われる一寸法師ですが、その身長をご存知でしょうか。

一寸、とい大きさに合わせて記すと、その身長は6尺の大きさになったということです。6尺を現代のメートル法に直すと、だいたい182cmという高さになります。

3cmから182cmという、約60倍もの高さに成長して、一寸法師自身もさぞかし驚いたのではないでしょうか。

ちなみに大きく成長した一寸法師の、鬼を退治したという武勇伝は京都でも広まり、一寸法師は帝に呼ばれ、気に入られて中納言という高い役職にまで出世したということです。