ウサギとカメ、という童話を一度は読んだことがあるのではないでしょうか。ある日、かけっこで勝負をすることになったウサギとカメの話ですね。

「まさかのろまのカメに負けるはずがない」、と自分の力を過信したウサギはレースの途中で居眠りをしてしまい、その間にカメがゴールしてしまった、というお話です。また、ウサギが夜行性であることもカメが勝利する要因になったようです。

ちなみに、ウサギもカメも日本になじみ深い動物であることから、「これは日本が原作の昔話だ」と思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、この物語はイソップ童話の一つで、海外からやってきたお話です。日本に流入した年代については室町時代の後期以降と言われており、一般に知られるようになったのは、明治時代に教科書に載ってからのようです。

また、その頃のタイトルは現代の「ウサギとカメ」ではなく「油断大敵」というタイトルでした。まさにその通りですね。

さて、このウサギとカメですが、負けてしまったウサギにはその後の続きの物語が存在しているようです。今回は、その続きの物語を紹介していきましょう。

タイトルは「負けウサギ」というタイトルになっており、新潟県に伝わる民話とされているため、イソップ童話として伝わってきたその後に、どなたかが作り、語り継いで来た物語なのでしょう。

その物語とは、のろまのカメに負けてしまったウサギは、ウサギの仲間たちからバカにされ「おまえはウサギの恥さらしだ」と住んでいた場所を追い出されてしまいます。

しかし、近所に住むオオカミが、自分の住みかだった場所の子ウサギを狙っていると知ります。オオカミから子ウサギを守れば、一緒に暮らしていた仲間も認めてくれるのではないか、そう思った負けウサギは、仲間のところへ行って、自分がオオカミをやっつけてやると宣言します。

負けウサギは一人でオオカミのところへ行き、オオカミに言います。「子ウサギを連れてきたいのですが、オオカミさんの顔を見ると子ウサギたちが怖がるので、連れてこられません。良いと言うまで、後ろを向いていてもらえませんか」

そう言ってオオカミを後ろ向きに崖に立たせると、負けウサギは後ろからオオカミを思いっきりどつき、オオカミを谷底へ落としてしまいました。オオカミはそのまま崖下へ落ちて死んでしまいました。

そして、子ウサギたちはオオカミに食べられずに済み、負けウサギは英雄として仲間に温かく迎え入れられ、住んでいた場所に帰ることができました。というものです。

その他にも、地域によっては、ウサギとカメが再びかけっこをして今度はウサギが勝った、とするものもあるようです。

その場合は、カメのセリフが印象的で、かけっこの勝負の後に微笑んでいるカメを見て、ウサギが「どうしてそんなに嬉しそうなんだい?」と尋ねます。

するとカメは、「一度目の時よりもタイムが縮まったから」と答えるようです。カメは、ウサギと勝負していたと同時に、実は過去の自分と勝負していたという深い内容ですね。

昔話や童話は、人に読み継がれ親しまれているほど、作家や読む人の心に残り、「あの主人公はこの後こうなったのではないか、こうなれば良いな」などの想像がふくらみ、地域によって色々な物語が誕生するのでしょう。