鶴の恩返し、と言えば、雪の中、おじいさん、もしくは若者が助けた鶴が恩返しに来るという有名な昔話ですね。鶴に限らず「助けた動物が何かしらの恩返しにくる」という流れの昔話は多く存在しているようです。

例えば、相撲で負けてばかりのネズミと、その相手のネズミに餅とふんどしを用意してあげたことで、小判をもらって裕福になったおじいさんとおばあさんの話「ねずみの相撲」。

豆を盗みに来た子持ちの母狐に、豆をやり逃がしてやったことで、翌日やって来た狐が恩返しにと良い太鼓に化け、その太鼓を町で売って大もうけしたおじいさんの話「狐の恩返し」。

浜辺でカメを助け、アブに弁当の残りをやったことで、彼らの手助けがあり広いお屋敷の娘のお婿さんになることができた「カメとアブの援助」。

その他にも、川底に刺さった刀が原因でひとりぼっちになったカッパの話相手をした和尚さんのおかげで、改心したカッパが村人のために命を落とすまで雨乞いをして雨を降らせる「カッパの雨乞い」。

また、「猿の恩返し」や「カエルの恩返し」、「ハチの援助」、「山鳥の恩返し」、「カニの恩返し」、「緋鯉の恩返し」などなど挙げればキリがありません。

その中でも鶴の恩返しは、鶴が娘の姿になってやって来て、その羽を活かしてすばらしい反物を織ってくれる、さらに反物は高値で売れたのでおじいさんたちは裕福になったというお話です。

さらに印象的なのは「のぞいてはいけませんよ」と言って機織りをするシーンではないでしょうか。見られたら正体を明かして、飛び去ってしまう、というエンディングも切なくて印象に残りますね。

そんな鶴の恩返しですが、ある地域に伝わるこの昔話には、この先に続きがあるようです。その続きとは、いったいどんなものだったのでしょうか。今回は、鶴の恩返しについて紹介していきましょう。

結末が一風変わった鶴の恩返しが伝わるのは、大阪のあたりで、最初は一般的な鶴の恩返しとそれほど変わらない始まり方をします。

ある日、雪の中旅をしていたおじいさんが、罠にかかっていた一羽の鶴を助けます。しばらくして自宅に帰ったおじいさんの元に、娘が尋ねて来ます。雪もひどいのでしばらく家においてやることにしました。

やがて娘はおじいさんの身の回りの世話をするようになりますが、ある日部屋に機織り機があるのを見つけ「織物をしても良いか」と織物を始めます。

ところが織物を始めると、娘はだんだんと痩せて、やつれていってしまいました。「どうしたんだろう」と心配したおじいさんは、ある日機織り機のある部屋の戸を開けてしまいます。

すると、羽が抜け落ちてあわれな姿になった鶴がいました。鶴は「見られたらここにはいられません」と飛び去ります。

ところが、大部分の羽を織物に使っていた鶴は、うまく飛ぶことができませんでした。しばらく飛んだ後、道頓堀のあたりに墜ちて死んでしまっているのを、そこに住んでいる人が拾って焼き鳥にしておいしく食べてしまった、ということです。