花咲か爺さんという昔話を覚えているでしょうか。「枯れ木に花を咲かせましょう」というフレーズが印象的な昔話です。

このあらすじも、現在のものではいくらかソフトな表現になっている場合が多いようですが、元々の原作ではどうだったのでしょうか。今回はこちらの昔話についてご紹介しましょう。

花咲か爺さんという昔話は、元々は「花咲か爺」や「枯れ木に花咲かせ爺」という題名で発表された昔話で、室町時代から江戸時代末期にかけて成立した歴史の古い昔話です。

物語の登場人物には、一組のおじいさんおばあさんと、彼らに拾われ可愛がられる白い犬、そしてそのおじいさんたちとは対照的に欲の深い、もう一組のおじいさんおばあさんが出てきます。

現在の物語では、最終的に欲張りなおじいさんおばあさんは自分たちの行いを悔い改め、平和なエンディングを迎えるものが多いようですが、原作では彼らの欲深さが際立っています。

まず、おじいさんとおばあさんが畑仕事をしていた際、かわいがっていた犬(名前はシロ)が、「ここ掘れワンワン」と鳴き始めたので、そこを掘ると大判小判がたくさん掘り出されます。おじいさんたちは裕福になり、近所にもその福をお裾分けしたのですが…

「うちの畑でも大判小判をいっぱい掘り出してほしい!」と、この状況を妬んだ欲張りなおじいさんおばあさんは、シロを無理矢理に自宅の畑に連れて来て、「大判小判を探せ!」とどついたり蹴ったりします。

その結果、シロはある場所でワンワンと鳴くのですが、そこを掘ってもがらくたしか出てきませんでした。怒った欲張りの老夫婦は、持っていたくわでシロを殺してしまいます。

シロの飼い主のおじいさんたちはたいへん悲しみ、シロの亡骸を引き取るとお墓を作り、お墓の側には松の木の苗を植えて供養します。するとその木は、すぐに大きな木へと急成長しました。

「シロは餅が好きだったなあ」と大きく成長した木を見たおじいさんはシロを思い、「そうだ、この木で臼を作ってお持ちをついてやろう」早速その松の木を切り倒し臼を作っておばあさんとお餅をつくと、餅の中から再び大判小判が溢れ出てきます。

これを見た欲張りじいさんは、「羨ましい!」と思いその臼を強引に借りて餅をつきます。しかし餅からはゲテモノや汚物しか出てきません。怒った欲張りじいさんとおばあさんは、借り物の臼を斧で割って薪にして燃やしてしまいます。

シロの飼い主のおじいさんたちはその灰を引き取り、シロの墓へまいて供養しようとしましたが、どこからか暖かな風が吹いて来て、庭の草木にかかったかと思うと、そこら中の花が咲き始め、おじいさんの庭は美しい春景色になります。

「枯れ木に花を咲かせましょう」と言って歩いていると、大名とすれ違います。大名は「おもしろい、それではその桜を咲かせてみよ」と言うのでおじいさんは、枯れ木の桜の木に灰を振りまくと見事な花が咲きました。

その花があまりにも美しいので、大名はおじいさんにたくさんの褒美を授けます。これを見た欲張りじいさんたちは、真似をして灰を撒きますが、花は咲かず、灰が大名の目に入ったことで罰せられます。

最後の最後にすっきりしましたね。これでシロも少しは報われたことでしょう。しかし、欲張りな人はどこまでも欲張りです。人に優しく接するという心の余裕を持って、暮らしたいですね。