かちかち山、という昔話を覚えているでしょうか。以前は絵本やアニメの昔話などでもよく見かけた気がしますが、最近はあまり見ませんね。

その原因というのも、おじいさんがおばあさんの肉を食べてしまう、という衝撃的なシーンがあるせいかもしれません。

今回は、なぜおじいさんがおばあさんの肉を食べることになったのか、なども含めて「かちかち山」のあらすじを紹介していきましょう。なお、この童話は室町時代末期から江戸時代にはあったと言われている歴史のある昔話です。

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。二人は毎日畑仕事に精を出していましたが、しょっちゅう悪い狸がやってきては、二人が植えた種や作物を掘り返したり荒らしたりして悪さをしていました。

怒ったおじいさんは罠を作り、この悪い狸を捕まえるとおばあさんに「よしよし、夕飯は狸汁を作ってくれ」と言って畑に出かけました。

おばあさんは早速狸汁を作ろうとしましたが、狸が「もう悪さはしませんから許してください」と言うのでかわいそうになり、狸の縄をほどいてやると、狸は突然おばあさんに飛びかかり、側にあった杵でおばあさんを殴り殺してしまいました。

そしておばあさんの肉で婆汁を作るとおばあさんに化け、おじいさんの帰りを待っていました。帰ってきたおじいさんは、それを嬉しそうに食べました。

おばあさんに「これで平和になるなあ」と話したところおばあさんは狸になり、「それは婆汁だよ!」と言って憎たらしく笑いながら逃げて行きました。おじいさんは途方に暮れました。

狸に仕返しをしたい、けれど良い方法が見つからないおじいさんは、近所に住んでいる頭の良いウサギに頼ることにしました。ウサギはわけを聞くと憤慨し「私に任せて」とおばあさんの敵討ちを引き受けます。

まずウサギは狸のところへ行って「お金になる話があるんだけど、一緒に山へ行かない?」と誘って山へ柴刈りに誘います。

背中が柴でいっぱいになったところで、ウサギが火打石を持ち出し、その柴に火をつけようとします。「かちかち」という音が響くのを不審に思った狸が「ウサギさん何の音?」と聞くとウサギは「ここはかちかち山だから、かちかち鳥が鳴くのよ」と言いました。

やがて狸の背中から大きな炎が上がり始め、狸は背中に大火傷を負いました。そして狸が自宅で休んでいると「具合はどう」と言ってウサギが薬を持ってやってきました。「これは火傷によく効く薬なの。塗ってあげる」と、たっぷり唐辛子が入った味噌を火傷にすりこみました。

それから狸は何日間か激痛に悩まされました。火傷が治ると、ウサギは今度は「この前は悪かったわね。お詫びにたくさん魚が捕れるところに案内するから、一緒に魚を捕って食べましょう」と誘います。

小さい木の船と、大きな泥の船を用意して狸に選ばせました。「大きい方が魚がたくさん乗るわね」と言うと狸は迷わず泥の船を選びました。

沖に出ると案の定、泥の船には穴があき沈み始めました。溺れていく狸を、ウサギはさらにオールで叩いたり押さえつけたりしたので狸は溺れ死んでしまいました。ウサギはおばあさんの敵討ちに成功しました。

以上がかちかち山のあらすじですが、この原作の他に芥川龍之介がかちかち山を書き直しており、そこでは、ウサギは10代後半の美少女に、狸は、そんなウサギに恋いこがれ、ただ従う中年の男性に擬人化されているようです。