ブレーメンの音楽隊、という童話を覚えているでしょうか。年老いたロバが先頭となって、犬、猫、ニワトリの4匹が一緒にドイツのブレーメンを目指す物語です。

年老いたり、体が故障したりと、人の役に立てない体になっていた彼らは、飼い主に処分されそうになったため家出をして、自由都市のブレーメンで音楽家になって、楽しく暮らそうとしていました。

実際、ドイツはブレーメンの旧市街の庁舎前には、ロバの上に犬、猫、ニワトリが乗ったブロンズの銅像もあり、そのロバの足をなでると願い事が叶うということで、ロバの足はピカピカになっておりちょっとした観光スポットにもなっています。

さて彼らがブレーメンに着く前に、ブレーメンを目指すのをやめてしまった理由とは何だったのでしょうか。また、ブレーメンという都市を目指していた理由も紹介していきましょう。

ブレーメンの音楽隊は、グリム兄弟が書いた童話で、古くはドイツの民話として12世紀頃には広く知られていたと言われています。

道中で出会った4匹は、ブレーメンを目指していましたが、途中で泥棒の家を見つけます。泥棒の家には、泥棒も住んでいましたが、ごちそうも宝物もあったことから、動物たちは「何とかして泥棒たちを家から追い出してしまおう!」と作戦を立てます。

そして、4匹はロバの上に犬が、犬の上に猫が、猫の上にニワトリが乗って、窓の近くに立ち、恐ろしい影絵を映し出して、めいめいが鳴き叫ぶことで、泥棒たちに「お化けだ」と思わせて彼らを追い出すことに成功します。

動物たちは、この家で一休みして再びブレーメンを目指す予定だったのでしょうが、予想以上にこの家の住み心地が良く、そのままこの家に住み着いてしまい、ブレーメンに行くことはなかったということです。

ブレーメンに行かなくても、気の合う仲間がいれば楽しく暮らせる、ということなのでしょう。そでは、彼らがなぜブレーメンを目指していたのかというと、当時ブレーメンは自由ハンザ同盟に加入していたためです。

自由ハンザ同盟とは北ドイツを中心にバルト海の貿易を独占した同盟で、ヨーロッパ北部の経済を支配していました。これに加入している都市は、全盛期にはブレーメンを含め200都市ほどあり、主なものにはリューベック、ハンブルクなどが挙げられます。

自由ハンザ同盟に加入している都市は自由ハンザ都市と呼ばれ、色々な人やものが多く出入りすることから、活気にあふれ仕事も豊富で、例えば元々は農家の人間でもロバたちでも、音楽の才能があれば音楽家になれて、楽しく暮らせる可能性がありました。

そこでロバたちは、ブレーメンを目指していたのですが、彼らは自由な都市に着く前に自由に暮らせる場所を見つけて、そこで幸せになった、というエンディングになっています。

タイトルに「ブレーメンの音楽隊」と付いているのにブレーメンに着いていないし、音楽隊にもなっていなんて、おもしろい話ですよね。

なので、ブレーメンの音楽隊を正確に表すとしたら、「ブレーメンを目指した音楽隊」「ブレーメンを目指していた4匹」「ブレーメンで音楽隊になろうとしていた4匹」ということになるのではないでしょうか。