眠り姫、と言えばディズニーなどでは「眠れる森の美女」というタイトルでアニメ化されている有名な童話ですね。また実写版でもディズニーの「マレフィセント」という作品があります。

眠り姫のその他の呼び名には「いばら姫」などが挙げられますが、もっとも古い原作では、「太陽(日)と月とターリア」というタイトルが挙げられます。

さて、今回取りあげるのは、このもっとも古い原作でのエピソードです。それでは早速紹介していきましょう。

眠れる森の美女は、元々はヨーロッパに伝わる民話であり、現在主に知られているのは、グリム兄弟が童話に書き直したものです。

ちなみにグリム兄弟以前には、赤ずきんちゃんなどの作者であるシャルル•ペローが童話にしていました。

このペロー版よりも古いものが、ジャンバッティスタ•バジーレの童話集「ペンタメローネ」に収録されている「太陽と月とターリア」です。

グリム版のあらすじと、ペロー版のあらすじの違いは、王女誕生のお祝いの会に呼ばれる魔女の数が、12人であるか8人であるかということと、ペロー版では、王子様のキスで目覚めるのではなく、ちょうど呪いが解ける時期だったため、王女は王子様の前で自ら目覚める、などの違いがあります。

その他、ペロー版では王女が眠ったあと、王様とお妃様は、魔法使いに相談して家来や料理番などは王女と同じように百年の眠りにつかせますが、自分たちは城を離れて普通に暮らし、一生を終えます。

また、呪いを解いた王子様と王女が結婚した後日談が記載されてあり、そこではなぜか、王子様の母親が人食い魔女であり、王女とその子供たち(男女の双子)を食べようとしたが、王子に撃退されたというエピソードがあります。

こちらは、古い原作の名残りのエピソードなのではないかと思えますが、王子様のある行動が省かれてしまっているので「どうしていきなり母親が人食いに?」という状態になってしまっていますね。

さて、それでは母親が人食いになってしまった、王子様の問題のある行動とは、いったい何だったのでしょうか。

もっとも古い原作の太陽と月とターリアでは、眠る王女の名前は「ターリア」となっており、眠りに落ちている城を偶然訪ねてくるのは、王子様ではなく、鷹狩りをしていた王様であるとなっています。

100年の時が経ち呪いが解けようとしていた城に訪ねて来た王様は、美しい眠り姫のところへたどり着き、その美しさに心を奪われます。

そして眠っている状態の王女をそのまま犯してしまった、というエピソードがあるのです。行為後王女は目を覚まさなかったので、王様はそのまま自分の国へ帰ります。

そして、王女は眠っている間に男女の双子を出産します。この双子の名前がタイトルにある「太陽」と「月」でした。間もなく指に刺さっていた針が取れて王女は目を覚まします。

王女を孕ませた王様も、自分の国から戻ってきて双子の誕生を喜びます。ここで問題なのは、王子様ではなく王様なので既にお妃様があったことです。

案の定、王様の浮気にお妃様は気付き嫉妬に燃えます。そして王様のフリをして双子を自分の国へ呼び寄せ料理長に二人をスープにするよう命じます。

料理長は機転を利かせ、子やぎの肉にすり替えます。そして次はターリアを呼び寄せて火あぶりで殺そうとしますが、それに気づいた王様によって、逆に火の中へ放り込まれるというエンディングを迎えます。

すべての原因は、王様の浮気にあったという童話らしからぬ童話ですね。しかしこれが、童話の原作のおもしろいところでしょう。